大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 平成4年(家)485号 審判

申立人 平田聖美こと朴由美

相手人 木下四郎こと金四郎

未成年者 金万里子 外1名

主文

相手方は申立人に対し、平成3年3月1日から未成年者らがそれぞれ成人に達する月まで、毎月1人につき金1万5000円宛を毎月末日限り支払え。

理由

(申立)

相手方は申立人に対し、未成年者らの養育費として1人につき毎月金6万円宛を支払え。

(当裁判所の判断)

1  本件記録によれば次の事実が認められる。

(1)  申立人と相手方は、平成3年2月13日に未成年者らの親権者を申立人と定める離婚判決が確定し、以後、申立人が未成年者らを養育している。

(2)  申立人は、かつてマネキンの仕事をしていたが、現在は無職で生活保護費として生活費16万6480円、教育費1万0220円、住宅費3万1000円の合計20万7700円から収入充当額1万円を控除した19万7700円(月額、但し、平成3年9月時点)を受給して生活している。

(3)  相手方は婦人靴製造職人として稼働し、月収23万円で賞与などはなく、必要的経費として、国民健康保険料3430円、家賃8万円及び職業費15パーセントとして3万4500円を控除した11万2070円(月額)がその可処分所得である。

2  当事者はいずれも韓国籍であるが、それぞれ大阪府内に住所を有するので、日本の裁判所が国際裁判籍を有し、かつ、当裁判所にその管轄権がある。また、準拠法については、扶養義務の準拠法に関する法律2条により、扶養権利者、未成年者らの常居所地法である日本民法が準拠法となるものである。

そこで、以上の事実によって検討するに、申立人については、生活保護費は最低生活費であるので分担能力はないものと言うべく、一方、相手方の最低生活費は、生活保護基準(1級地-1)によれば、第1類費3万4790円、第2類の基準額3万7720円、同冬季加算額1145円(1カ月平均)、期末一時扶助費1077円(1カ月平均)の合計7万4732円となるから、差引き3万7338円の分担能力があることは明らかである。

いわゆる生活保持義務により、未成年者らが相手方と共同生活をした場合に未成年者らのために費消されるべき金額を、労働科学研究所の総合消費単位によって算出すると(消費単位は、申立人は95、未成年者万里子は60、未成年者加代は55、相手方は105(既婚男子、中等作業))、上記可処分所得のうち未成年者らのために費消されるべき金額は1カ月5万8582円となる。

112070×(60+55)÷(105+60+55)

しかしながら、この金額は上記分担能力を超えるものであるから、相手方は分担能力の範囲内で負担すべきである。

そこで、相手方は申立人に対し、養育費として未成年者1人当たり1万5000円の合計3万円を分担するのを相当と認め、本件審判移行前の調停申立の月である平成3年3月1日から未成年者らがそれぞれ成人に達する月まで、1人につき毎月金1万5000円宛を毎月末日限り支払うべきである。

よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 川鍋正隆)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例